ハゼの産卵|オスが掘るY字のトンネルと、卵を守る父親
落ちハゼが向かった先の深場では、何が起きているのでしょう。マハゼの産卵は、魚の中でもめずらしいほど手間のかかるものです。釣り人が見ることのない、冬の海底の話を紹介します。
この記事のポイント
- 産卵は冬から春先。ピークは2〜4月ごろとされる
- オスが、体長の10倍を超えるトンネル状の巣穴を掘る
- 卵は巣穴の天井に産みつけられ、世話はオスがひとりで担当
- 産卵後、親魚の多くは一生を終える
産卵の時期
マハゼの産卵は、冬から春先におこなわれます。資料によって「1〜3月ごろ」とするものや、「1〜5月ごろ(ピークは2〜4月)」とするものがあり、年や場所によっても前後します。南の地方ほど早く始まる傾向があります。
オスがトンネルを掘る
産卵の主役は、成熟したオスです。水深10mより浅い東京湾の海底(泥底や砂泥底、やわらかいヘドロ底)に、自分の体長の10倍を超える長さの巣穴を掘ります。長さは1mから、数mに及ぶこともあるそうです。
巣穴の形は、ただの筒ではありません。「V字」や「Y字」と呼ばれる、枝分かれした複雑な形をしています。
卵は天井に、ぶら下げるように
巣穴ができあがると、オスはメスを巣穴に招き入れます。メスは、トンネルの内壁や天井に、長さ約2mmの長円形の卵をたくさん産みつけます。卵は、天井からぶら下がるような形になります。
卵を守るのは、オスひとり
産卵が終わると、卵の世話と見張りは、すべてオスの仕事です。卵がふ化するまで巣穴にとどまって、外敵から卵を守りぬきます。
この時期のオスは、巣穴にこもっているため、網にかかる割合が極端に減ります。また、巣穴から顔をのぞかせるオスは、あごが張り出した特徴的な顔つきになることが観察されています。
卵のふ化を見届けたあと、親魚の多くは体力を使い果たして、一生を終えます。
冬の海底は、どんな環境?
東京都の調査に、産卵期の海底の環境を調べたデータがあります。2013年1月24日に、東京湾奥の5地点(羽田洲、羽田沖、15号地、三枚洲、お台場)で調べたものです。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 水深 | 3.3〜5.3m |
| 水温 | 8.8〜11.2℃(表層・底層とも10℃前後) |
| 塩分 | 表層 21.8〜28.6/底層 27.4〜29.5 |
| 溶存酸素 | 9.2〜10.4mg/L(底層でも十分な酸素がある) |
水温は10℃前後まで下がっていますが、海底にも酸素がたっぷりあります。巣穴を掘って、卵を守りぬくには、十分な環境がそろっていることがわかります。
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